ハイブリッドセラミック


 

「ハイブリッドセラミッククラウン」は、白い歯を検討されている方がネットで「銀歯を白く」「セラミック歯」「 安く」などのキーワードでいろいろ調べているとヒットしてくる頻度が高いと思います。

 

( ハイブリッドセラミッククラウン )


そのそも「ハイブリッドセラミック」って、いったいどんなモノで、どんな特徴があるのだろうということが知りたくなります。

 

また「ハイブリッドセラミッククラウン」と並んで、同じく「白い歯」ということでネットで調べていくうちに「ジルコニアクラウン」というものも目に付くはずです。

 

「クラウン」とは歯のかぶせ物のことを指しますが、治療法検討の際に競合されることも多い「ハイブリッドセラミッククラウン」と「ジルコニアクラウン」を比較を交えてお話しします。

 

※以下「ハイブリッドセラミッククラウン」を「ハイブリッド」、「ジルコニアクラウン」を「ジルコニア」と省略して表現します。

 

この二つは一見同じようなタイプの白い歯に見えますが、実は似て非なるモノ、中身は全くの別物と言っても過言ではないでしょう。

 

はじめに歯科医院での料金設定ですが、一般的に「ハイブリッド」の方が「ジルコニア」よりかなり安い料金設定になっていることがほとんどです。

 


 

ハイブリッドとジルコニア・両者の特徴( 違い )

 

 

(  強度・耐久性 ) 

「ジルコニア」の方が「ハイブリッド」と比べ断然強度あり。

 

( 経年劣化 ) 

「ジルコニア」の方が「ハイブリッド」と比べ断然劣化(色褪せ等含む)しにくい。

 

( 料金 ) 

「ハイブリッド」の方が安い料金設定にしてある傾向の医院が多い

 


 

「ハイブリッド」の方が「ジルコニア」に比べて「安い」とは言っても、それでも数万円也の投資をされるわけですから、、、見た目はどう?耐久性は?などということも気になってくると思います。

 

「ハイブリッド」も「ジルコニア」も、見た目的には「従来のオールセラミック( ガラス系セラミック )」と比べると、自然な歯の繊細かつリアルな質感( 透明感 )は再現できません。

 

そうは言っても、一般の患者さん目線では両者ともふつうにキレイな歯(十分合格レベル)に見えるでしょう。

 

「ハイブリッド」と「ジルコニア」、実物を見比べてみると、やはり一般の患者さん目線では両者の違いは外見からはほとんど判らないと思います。

 

ただ数年使っていくうちに両者の違いはハッキリと出てきます。「ハイブリッドセラミック」は「セラミック」という名は冠しているものの、基本的にはプラスチックが主体の素材です。

 

当初のツヤ感のある美しさをずっと維持することは難しいのです。使い込むにつれ、それなりのやつれが出てきます。このことをもうちょっと分かりやすく皆さんの身近な例でお話しします。

 

皆さんが毎日使用されている食器類、、、瀬戸物( セラミック:陶磁器 )の食器は何度洗っても、何年も使い込んでも表面のツヤ輝きはほとんど衰えないと思います。

 

それに対してプラスチック製の食器は、特に汚れが取れにくいトマトソース系のパスタやカレーなど食べた後に洗う際に、きれいに汚れを掻き取ろうとして二色のスポンジの固い側( 研磨材が混入されている側 )でこすり洗いなどしていると、回数を重ねるにつれ細かな引っ掻き傷が付いてきます。

 

プラスチック製の場合、物によっては当初白い皿だったのに何となく色がくすんだり、黄ばんで見えるようになってきた、なんて思ったことはないでしょうか?

 

食器以外にも白物家電の白いプラスチック部分や車の樹脂パーツなども同様で、年数がたつと黄ばんだり、色褪せてきます。何度も洗車機にかけるとヘアスクラッチ状の傷が付いてきます。

 

これを口の中で考えると、毎日の歯磨きがこれらに該当してきます。

 

研磨剤含有の歯磨きペースト( 市販の歯磨きペーストのほとんどは研磨剤が配合されています )で、プラスチック成分が主体の歯( ハイブリッドセラミッククラウン )を毎日ゴシゴシこすり磨きしていると、上述の食器類などプラスチック製品と同様、傷つき、摩耗してきます。表面のツヤはなめられ、治療した当初よりくすんだ色になってきます。当初は光沢があったのが徐々にマッドな感じに。

 

 

上述の例では、プラスチックはセラミックに劣る、ような話になっていますが、歯科で使用される素材(あるいは治療法)には、それぞれにメリットとデメリットがあります。

 

ハイブリッドセラミック登場以前から歯科で用いられている素材で現在でも主流となっている「従来型セラミック( ガラス系セラミック )」一般的に「オールセラミック」と呼ばれている素材にも、素材( 物性 )としては決定的な弱点があり、それは衝撃に弱く割れやすいということ。

 

これも食器で説明しますと、分かりやすく、お茶碗やお皿を誤って床に落としてしまい割れちゃった、、、などという経験、皆さん過去に1度くらいおありではないでしょうか?

 

「従来型セラミック」は、食器などの陶磁器と酷似の素材ですので、これを「クラウン」に使用した場合、人によっては( 咬み込みの強い人や歯ぎしり・食いしばりの癖のある人、歯の摩耗が全体的に進行している人など )に適用すると割れてしまったりします。

 

その点「ジルコニア」は「従来型セラミック」より強度的にかなり丈夫な素材ですので、割れてしまうなどということは、まず滅多にありません。

 

 


ハイブリッドセラミック・オールセラミック・ジルコニアそれぞれの「曲げ強度」の比較

 

「 曲げ強度(曲げ強さ)」という言葉、皆さんあまり馴染みはないと思いますが、歯科でクラウンなどに使用される各種素材の強度を示す指標です。試験片に荷重をかけた際に、試験片が破壊される最大荷重値になります。

 

( ハイブリッドセラミック ) 

 

200 ~ 300 MPa前後

 

(  オールセラミック ) 

 

360 ~ 400 MPa 前後 

 

( ジルコニア ) 

 

800 ~ 1.500 MPa 前後

 

※ 単位は MPa ( メガパスカル ): 数値が高いほど強度がある( 丈夫である )ことを示しています。

 


ただ、硬ければ硬いほど良いということではなく、ハイブリッドセラミッククは固さが天然歯に近いため、噛み合わせた時に対合歯を傷めない( 対合歯にやさしい素材である )とも言われています。

 

ですが、数万円かけて何回か通院して治療して、例えば治療を終えてから1年未満であっさりと割れて( 壊れて )しまった・・・なんてことがあったら、元も子もありません。


割れてしまった場合には再治療で通院が必要となりますので、やはり強度・耐久性は大事です。

 

硬さのある「ジルコニア」は対合歯に対して為害作用があるのか( 優しくないのか )?と言えば、、、適正に研磨・咬合調整されたものであれば特段問題は無いとされています。

 

先にも述べたように、歯科で使用される素材( 治療法 )には、それぞれにメリットとデメリットがあります。 

 

これをご覧になっている皆さんはご自身に最適な治療法を厳選・選択されようといろいろ調べておられ、競合をふるいにかける( どれかに1つに絞り、最終決断の )段階という方も多いかと思います。

 

今、皆さんは価格や強度・耐久性・耐劣化性、見た目のキレイさなどに興味が集中している状態かと思いますが、、、

 

意外な落とし穴、、、ではないですが、皆さん、ほんとはけっこう気にされるはず、、、治療に際して「どのくらい歯を削るの?」「歯を削る量は、治療法によって変わってくるの?」ということは頭におありでしょうか?

 

 

ハイブリッドはレジン( 歯科用プラスチック )にセラミックの粒子を混ぜ込んで強度を上げた物という謳い文句ではあっても、やはりジルコニアと比べたら強度に劣るため、破折のリスクが危惧されます。

 

ですのでクラウンで治療する際、ハイブリッドや CAD/CAM冠 ( 保険 )などのプラスチック主体の素材の場合、強度を保つためには厚みでカバーしなければなりませんので、厚みを確保する分の歯の削除量が必要となるわけです。

 

素材そのものの強度があるジルコニアに比べて、プラスチック系素材の場合は歯を削る量が必然的に多くなるということになります。

 

( ジルコニア仕様に歯を削った際のイメージ  )



 素材による歯質削除量の比較

 

 ハイブリッド > オールセラミック > ジルコニア 

 

という感じになり、上記3種(審美系)の代表的な素材の中では「ハイブリッド」は歯を削る量が比較的多くなり、「ジルコニア」は「ハイブリッド」に比べると少なくて済みます。

 

3種の素材の強度を比較すると、、、

 

ジルコニア > オールセラミック > ハイブリッド

 

となり、削る量に対して並びが逆転します。強度が高い素材を使用すれば歯を削る量は少なくて済むことになります。「ハイブリッド」はこれら3種の素材の中では、強度(割れ・破折のリスク)が懸念されるため、その対策として十分な厚みが必要になります。ゆえに歯を削るわけです。


「ハイブリッドセラミック」、「オールセラミック」、「ジルコニア」、3種の中で「ジルコニア」は最も後発の素材なのですが、これは歯科に限らず、後発のものは従来のものの弱点を克服( 改良・改善 )したものが順次発売されているというのが通例です。

 

歯は入れた後に長期間快適に使うことが出来てなんぼですから。さらに言えば、キレイな状態( 劣化が少ない状態 )で長期安定維持したいもの。

 

一時の金額の安さも治療法選択のいちばんのポイントになるかと思いますが、その後何年も使うモノであるということを念頭に、「安い」からといってパッとそこだけにしか目が行かなくなるのではなく、それぞれの特徴を十分認識された上で、最終的にご自身の希望や予算に叶う賢明な選択をしたいものです。

 

当医院を訪れる患者さんの中には、最初は他の医院で治療を受けていて、クラウンなどの料金提示の段階で「金額が高かったから」などの理由で、ネットで調べてうちの方に来院( いわゆる転院 )される方も多いです。

 

その方々に私が「その医院さんでは 1本いくらという事だったのですか?」と尋ねると、大概 「ジルコニアクラウン」で 1本 10万円~15万円 くらいの所が圧倒的に多いようです。

 

確かに私も「ジルコニアクラウン」は 1本 10万円 ~ 15万円 が一般的な相場 ではないかと捉えております。

 

ちなみに「ハイブリッドセラミッククラウン」の一般的な価格相場に関してはおそらく 1本 3万円 ~ 8万円 くらいかと思います。

 

当医院での「ハイブリッドセラミッククラウン」の料金は 「オールジルコニアクラウン( スタンダードタイプ )」と全く同額の 1本 ¥ 49,800( 税抜 ) です。

 

他の医院さんのように両者の価格差は付けておりません。「ハイブリッドセラミッククラウン」に関しましては、一般的な相場相応価格としております。


ちなみに「ハイブリッド」は臼歯( 奥歯 の)ブリッジには、まず適用されません。やはり強度の問題があるからです。ブリッジはたわみの力がかかったり、咬合圧を受け止める負担が単冠( クラウン )と比べ、大きいからです。

 

ちなみにブリッジとは、ご存じない方のために、こんな感じのものです、、、



 

当医院では医院開業以来、一貫して「いい物を安く!」というポリシーでやっておりますので、やはり、長期間トラブルなく安心して使っていだだくという観点から、それに応えるべく信頼性( 強度・耐久性 )審美性(  耐劣化 )となると、、、

 

総合的に考慮すれば、口腔内に特に特別な事情がない方に関しましては「ハイブリッド」よりは「ジルコニア」の方をお勧めしております。

 

( オールジルコニアクラウン )


他の医院さんで「ハイブリッド」と「ジルコニア」の両者に数万円の価格差があれば、「安く・白い歯にしたい」「安く!」という事をいちばんのポイントにされている方にとっては、おのずと「ハイブリッド」の方( 安い方 )に興味が沸くものと思われますが、、、当医院では両者の価格差はありません。

 

ですので、他の医院さんで料金提示の話があった際、「ハイブリッド」なら少し安いから大丈夫なんだけど、「ジルコニア」だとちょっと高額になるんで、、、と躊躇されていた方、、、当医院の「ジルコニアクラウン」をぜひご検討されてみてはいかがでしょう?

 

視点を変えて、我々( 歯科医および歯科技工士 )治療・製作サイドから「オールジルコニアクラウン」と「ハイブリッドセラミッククラウン」両者を比較して、患者さんのお口の中に装着されるまでの流れで事情をお話ししますと、まず製作コストに関しては、材料費・技工料においても、両者に患者提供価格ほどの差があるわけではありません。

 

歯科医( および歯科技工士 )による治療( 技工作業 )行程も、ほとんど大きな違いはありません。一般的な患者価格( 相場 )ほどの差はないと言えるでしょう。

 

あとは、各医院毎における裁量(  技術料的な部分での価値観を価格にどのくらい反映させるのかは、あくまで任意  )によって、料金設定は医院毎に異なっているということです。

 

ご参考までに、そもそも 当医院の「料金表」には「ハイブリッドセラミッククラウン」はレギュラーメニューとしては掲載しておりません。

 

このことからも、長年「セラミック・ジルコニア専門」でやっている当医院で「ハイブリッド」の立ち位置をどう捉えているかを伺い知ることが出来るでしょう。