
セラミッククラウンやラミネートベニアの方がいい場合・ホワイトニングの方がいい場合
< ホワイトニングでは解決できないケース >
■ 重度の変色歯
日本人で時折見受けられるのが、テトラサイクリン系抗生物質の影響による変色歯です。
歯の色が明らかに全体的に暗く(灰色がかっている感じ)、1本の歯をよく見た時に木の年輪のように横線状に層に分かれているような見え方で、前歯数本が連続した横じま模様状になっている状態などが典型的な例です。
胎児期に母親が該当薬剤を服用した場合や小児期に本人が服用した場合に起こります。
このようなケースではホワイトニングでの歯の色の改善は困難です。
このような変色歯の方で、歯の色が悪いことに関して以前からかなりコンプレックスをお持ちで、なんとか白い歯を手に入れたいという場合にはセラミッククラウンやラミネートベニアによる治療をお勧めします。
※ 一口に変色歯と言ってももちろん程度にもよりますので、変色歯でお悩みの方におかれましては、1度クリニックへ出向き、歯科医師と相談されてみることをお勧めします。
■ 明らかに黒ずんで見える歯
グレーっぽい色の歯の人なども含まれます。これらの重度の変色歯の場合には残念ながらホワイトニングでは全く太刀打ち出来ません。
仮に根気よく続けたとしても改善効果が認められないことがほとんどです。セラミッククラウンやラミネートベニアによる治療をお勧めします。
■ 歯の摩耗の程度が強い人
特に歯ぎしりや食いしばりなどの癖がある人は歯の摩耗が進んでいる傾向があり、エナメル質が薄くなっているため、ホワイトニングの薬剤が敏感に反応して(具体的にに言うと、極度にしみる、あるいは痛みを感じるレベルに至る等)ホワイトニングを中断せざるを得ない状況になってしまうことがあります。
■ 虫歯のある人
この場合も虫歯をそのままにしてホワイトニングを実施すると、虫歯の部分にホワイトニングの薬剤が敏感に反応して強い痛みが出る場合があります。
歯科医の診断のもと適宜虫歯の治療を済ませてからホワイトニングということになります。ホワイトニング前提の虫歯治療は虫歯の程度や治療部位によってやり方もいろいろありますので、歯科医とご相談を。
■ 知覚過敏がある人
ふだんから冷たい刺激でどこということなく歯がしみる感覚があるという人や、歯磨きで歯を擦った時にチリッと敏感に反応する歯がある人。
ふだんの歯磨きで力を入れてゴシゴシ磨く人に多いのですが、歯の根っこの部分が掘れた状態(楔状欠損と言います)になっている人、歯根が露出している傾向がある人。これらに該当する人もこういった問題を解決してからということになります。
■ 神経を取った歯
神経を取ったまま(クラウンなどかぶせ物をしていない)状態で変色している場合というのがよくあるパターンなのですが、まだ変色まではしていない場合でもそのまま通常のホワイトニングを実施すると、神経を取っている歯だけ色が合わなくなるという現象が起こります。
神経のある歯と無い歯ではホワイトニングの効果(仕上がり・薬剤の効き)が全く異なるからです。
神経を取った歯をホワイトニングする特殊な方法もありますが、なかなか白くはなりません。神経を取った歯に関しては、いずれ最終的にはセラミッククラウンによる治療を選択される方が賢明かと思います。
神経を取っている歯は歯が脆くなっていますので、クラウンにすると、その脆くなっている歯を補強できるというメリットがあり、歯の色も断然キレイにすることができます。
■ 極端な要望
極端な要望というのは例えば、陶器やタイルのような白さにしてほしいという要望などです。ホワイトニングで出来ること、出来ないこと(限界)もある訳です。
ご希望の歯の白さに変えたい場合には、セラミッククラウンやラミネートベニアによる治療を選択されることをお勧めします。
ホワイトニングで完璧に白さの加減をコントロールすることは出来ません。
先にも述べましたが、ホワイトニング前(施術前)の歯の色は人それぞれ、もともと黄ばんでいる傾向の強い人、もともと白い人などなど、その人それぞれでホワイトニング後の仕上がり具合(白さ)および限界点も異なります。
< ホワイトニング単独では解決できないケース >
■ 前歯に既に虫歯治療の跡(レジン充填等)が多く認められる人
前歯部(主に右の犬歯から左の犬歯にかけての計6本)にレジン充填(一般的に前歯の虫歯治療に用いられるプラスチックの白い詰め物)が点在して多く見られ、レジンの変色等でまだらで継ぎはぎのような状態になっている場合、さらにそれが複数本に及んでいたり、1本の歯に対して詰めている範囲(面積)が比較的大きい場合。
治療跡の程度にもよりますが、ホワイトニングでレジンの色は白くすること出来ませんので、ホワイトニング後の再レジン充填や状況によってはセラミッククラウンやラミネートべニアによる治療を検討された方がいいケースとなります。
■ 前歯部(主に右の犬歯から左の犬歯にかけての計6本)のうち1本だけ(あるいは数本)セラミッククラウンやセラミックの差し歯だったりする場合
当然、ホワイトニングではそこの部分の色は白くできませんので、ホワイトニング後にそこの部位の再治療が必要な形となります。
これとは逆に治療済みのクラウンや差し歯の色に合わせてホワイトニングをするというパターンは、色合わせが難しいことが多いです。
治療済みのクラウンや差し歯もやり替えてホワイトニングもしたいという場合は、先にホワイトニングをしてから、その色に合わせて差し歯を作り替えるという順序が妥当です。
< ホワイトニング、クリーニング、セラミッククラウン・ラミネートべニアそれぞれの違い >
歯科において、歯を白くするということでイメージされる用語の中には「ホワイトニング」をはじめ「セラミッククラウン」「ラミネートベニア」「クリーニング(PMTC)」など、皆さんの中にはこれらの区別がハッキリしないという方も、もしかしておられるのではないでしょうか?
■「ホワイトニング」
歯(天然歯)そのものを内面から漂白し、歯を白くする方法です。前歯に差し歯があったり、レジン充填(虫歯治療の詰め物)がある場合、その部分は漂白されません。
自身の歯をいわば主原材料として施す処置となりますから、白さのレベルとしては自然な感じでかつとてもキレイな清潔感のある白さに仕上がります。
■「セラミッククラウン」
かぶせ物になりますから、歯を削って白いクラウン(人工物)をかぶせることにより歯を白くする方法になります。
よく「芸能人のように歯を白くしたい」という方がおられますが、テレビおよび各種メディアで見かけた憧れのまぶしいほどの白い歯の持ち主は、ホワイトニングではなく、こちら(セラミック法)を施して白いのだという比率がおそらく高いものと思われます。
ホワイトニングは歯を削ったりする必要はありませんが、こちらは本格的な治療になります。
■「ラミネートべニヤ」
歯の表面を1層削ってから、その上にちょうどネイルのようにセラミック製のシェルを張り付けるという方法です。セラミッククラウン同様「歯を削る」という行為が伴い、本格的な治療になります。
※ 歯を全く削らないでこれらの方法は不可能です。※ 当医院ではラミネートべニヤは対応しておりません(取り扱っておりません)。
セラミッククラウン、ラミネートベニヤの通院回数(期間)も通常の歯の治療に通う程度は必要になります。これらの費用に関しましては自由診療(保険適用外)となり、医院によって料金設定は様々ですが、1本10万円前後~の費用はかかると思います。詳しくは各医院の料金表等を参照されてください。
■「クリーニング」
歯の表面の汚れ(歯垢・歯石・着色)を取り、表面を滑沢化させ歯垢などの外来の付着物が付きにくくし、口腔内の適正な衛生環境を保つというものです。
専用のブラシやラバーカップなどを使用し、歯の表面に付着した汚れをを取るというイメージです。歯そのものを漂白(内面に浸透させて漂白)するホワイトニングとは全く別物です。
クリーニングではその人それぞれの本来の歯の白さのレベルには戻りますが、クリーニングをすれば歯がより(本来の自分の歯の色よりもさらに)パリッと白くなるというものではありません。
分かりやすくイメージ出来るもので例えて言うと、ホワイトニングは車の塗装コーティング( 専門店のプロの職人が高級車を対象に手掛ける本格的な方のです )。
これに対して歯のクリーニング( PMTC )はセルフ洗車した後、市販のワックスを手掛けした感じとでも言いましょうか、もともとのその車本来の色艶に回復させることは出来ますが、これのみでは塗装の色自体が変わる訳ではありません。野外駐車で風雨にさらされてしまうとその効果も長続きしません。
一方、専門の職人が手掛ける高級車用の本格的なグラスーコートコーティングは、最初に塗装面のごく表面をあえて一層研磨してから塗装皮膜の表面にグラスコート加工を施す訳ですから、その車本来の標準塗装色に加えてさらに深みのある色に変わります。その効果も長期間維持でき、以後ちょっとした汚れは水洗い洗車のみの簡単なケアで済むようになります。
今回ついでに「歯のマニキュア」と「ダイレクトボンディング」というものについても紹介したいと思います。これもネットでいろいろと歯の美白に関して調べている方は聞いたことがあると思います。歯のマニキュアなどは試してみたという人もいそうな気がします。
■「歯のマニキュア」
クリニックで提供されているものよりも、ネット通販品等市販のものの方が普及しているかも知れません。逆にクリニックで提供されている率がかなり少ないことから言えば、効果はそれなりの評価のものでしかないと言えるでしょう。
気軽に試せて剥がすのも簡単なのですが、その仕上がり具合はと言うと、およそ自然でキレイな歯の白さとは程遠く、あくまで一時しのぎ的なものと捉えてください。ホワイトニングやセラミッククラウン・ラミネートべニアとは全く比較の対象にすらなりません。
■「ダイレクトボンディング」
合成樹脂(プラスチック)で歯面を薄くコーティングする方法です。歯の形態修正にも用いられます。
ダイレクトボンディングはマニキュアとは異なり、クリニックでのみ提供されている処置で、通常の治療になります。
ダイレクトボンディングは、上塗り(ベタ塗り)的なマニキュアと比べると、ある程度の耐久性はあるのですが、合成樹脂という材質の特性上、治療直後はわりとキレイに見えても変色し易いため、変色改善のため、結局同じ歯に対して同じような治療を何度もやり直すことになりかねません。
変色をカバーする目的でダイレクトボンディング法でコーティングする場合、材質的に透明感の無い不自然な白さになってしまうことも多いので、あまりお勧めしません。