ハイブリッド VS ジルコニア


 

「ハイブリッド」か「ジルコニア」か?検討されておられる方へ、多少の参考になるかも知れないお話をもう1つ、、、

 

私も大学卒業後から医院開業して現在に至るまで、日々の診療の傍らずっと歯科業界の進歩・発展( 歯科機器や歯科材料、治療法や薬剤等の進化  )の過程を見届けてきました。

 

仮にもし歯科医である私自身がやむを得ず、自身の歯の治療が必要となり、クラウンでの治療となった場合、あるいは私の身内や親類・知人・友人にクラウンによる歯の治療を施す場合に、歯科材料や薬剤・各種治療法に関して精通している者として、今現在、さて、どの素材( 治療法 )を選ぶのか?

 

答えは「ハイブリッドセラミッククラウン」は、まず選びません。

 

迷うことなく「ジルコニアクラウン」を選択します。

 

理由はやはり一言で言って「ジルコニアクラウン」の信頼性( 長期安定時性、もっと平たく言えば単純に長持ちすること )に尽きます。

 

TV通販番組の「※」ではないですが、、、これはあくまで、長年「セラミック・ジルコニア専門」でやっている私個人の見解ですので、くれぐれも。

 

歯科医( 私など )は日々の診療に追われ、自分自身の歯の治療や、自分の身内、その他取り巻きの歯の治療となると、どうしても常に後回しになってしまいます。

 

身内の治療などは急性症状でもない限り、ほんと何年か越し、かなり後回しになります。

 

これは私が勤務医時代に何か所かの医院で研修を積ませていただいた際、そこの院長にあたる諸先輩方におかれても同様でした。

 

ほとんどの先生方が自分や身内の治療は後回しになっちゃうんですね、、、

 

ですので、私は身内や私と近しい人の治療をする際には、1度治療したらトラブル無くずっと安心で長持ちする方法( 物性的にも信頼性が高く、かつ、生体親和性が良い素材・・・いわゆる身体にもなじみの良い素材 )を常に選ぶようになります。

 

私自身、いざ自分の歯の治療が必要となったら、、、

 

まず、自分で自分の歯の治療はさすがに不可能ですから、同業者を頼る事になるわけですが、いかんせん治療に通うための時間がなかなか取れません。

 

それでもいよいよ、どうしても治療せざるを得ない状態ともなれば仕方なく知り合いの所へ、、、

 

対同業者同士ですと、治療する方も治療を受ける方もお互い手の内を知り尽くしている分、治療をする方は一般の患者さんの対応をするよりも正直やりづらかったり、治療を受ける方も、そこの医院の諸事情や治療の一連の流れをなまじ知っている分、けっこう気を使ったりします。

 

ですので、治療したら、もうしばらくは長期間維持・安定が図られ、以後いちばん手間がかからないと思う( 安心・確実な )方法を必然的に選択します。

 

クラウンが割れて( 破損して )しまったり、劣化して色がくすんできて見栄えが悪くなったり、はたまた、脱離しやすかったり( 取れやすかったり )すると、また治療しなおしたり、付けなおしたり等、他の先生の所に出向いて治療をお願いしなければなくなるので、そんなストレスが極力少なくて済む方法を選びます。

 

その第一選択が「ジルコニア」です。第一選択というより,、、、ジルコニア一択ですね。

  

以上、、、私自身や私の身内、私と近しい人に してあげたいような治療( 素材の選択 )についてお話しさせていただきましたが、皆様の治療法選択における多少の参考となれば幸いです。


 

歯はお口の中で一生涯、酷使され続けます。私たちは日々の食生活において、酸性の飲食物、アルカリ性の飲食物、熱い物、冷たい物、着色しやすい物、いろんな物を取り込み、咀嚼しています。

 

そして何より歯にとって、「咬合圧」の負担( 毎日様々な硬度の食物の剪断・すりこぎ・噛み砕き )は過酷です。まぁ、歯はその( 機能の )ために有歯類生物に存在する組織なのですが、、、

咬合圧はなにも食事の時に限らず、スポーツでここぞという時には歯をグッと噛みしめ、あるいは食いしばりますよね。

 

スポーツ以外でも、例えば重い段ボール箱などを持ち上げる際、無意識に歯を噛みしめると思います。口をポカンと開けては持ち上げないでしょう。こんな時も、けっこうな力(咬合圧)で噛みしめています。


その他には習癖的な「歯ぎしり」や「食いしばり」なども、日々歯に負担( 咬合圧 )をかけます。


このような過酷な条件下で、天然歯の代用物として「クラウン」を機能させることを想定した場合、「クラウン」の素材としての「ハイブリッドセラミック」は、物性的に他の素材( 「ジルコニア」や「従来型セラミック」など )と比較して、総合的にやや劣るかなというのが、今までこれら素材を全て扱ってみた私の実感・評価です。

 

「ハイブリッドセラミック」も前歯なら奥歯と比べれば咬合圧負担割合が少ないので、いいのかもしれませんが、、、審美的観点から言えば、前歯こそ「審美性( 見た目のキレイさ、かつ、その状態を末永く維持させる事 )」は重要です。

 

審美性に関して「ハイブリッドセラミック」と「ジルコニア」、「従来型オールセラミック」それぞれの耐劣化性( 経年劣化・変化 )の優劣比較については( ※ 同ブログ内「ハイブリッドセラミック」の投稿記事にて )既にお話しさせていただきましたので、ここでは省略します。

 

「ハイブリッドセラミック」にはもう一つ難点があり、「ジルコニア」や「従来型オールセラミック」と比べ、使い込んでいくうちに( 経年変化が進んでいくうちに )表面が傷みやすい( ハイブリッドセラミックは他の素材と比べ柔らかいという特性がある反面、傷や摩耗等で表面性状が粗造になる )ため、結果、プラーク( 歯垢 )が付着しやすくなり、クラウン周囲の歯肉炎を起こしやすくなるということ。

 

特に日頃から歯を強く磨きすぎる( 歯磨きペーストをたっぷり付けてゴシゴシ横磨きする )傾向のある人は要注意!です。

 

 ハイブリッドとジルコニアは、いずれも厚生労働省の認可を取得した歯科用素材です。

 

よほど物性的に問題のある素材なら、そもそも歯科用素材として認可されないでしょう。

 

「ハイブリッドセラミック」に関しても、歯科素材として使用してそこそこ問題は無いのです。そこそこ使える物ではあるのです。

 

ただし我々歯科医サイドは個々の素材の適用に関しては慎重に判断し、患者さんへプレゼンしなければなりません。

 

治療部位( 患者さんが治療を希望されている歯の部位)や、個々の患者さんの口腔内の特徴(例えば、噛み合わせの傾向や歯の摩耗・咬耗の度合い、欠損歯の有無、歯ぎしりや食いしばりの習癖の有無など )を踏まえた上で、適切な選択をする必要があります。

 

ハイブリッドセラミックもジルコニアも、各々メリットだけではなく、必ずデメリットも存在します。

 

当医院では基本的に患者さんのご希望はもちろん最優先にして差し上げるのですが、「この患者さんにこの素材はこういう理由で不向きである」とか、「この素材は適している」などを判断( 診査・診断 )し、患者さんにご提示・ご提案させていただいております。

 

それを踏まえて、最終的にどれを選択されるのかは、もちろん、各々の患者さんの自由意思決定に委ねます。


 

ハイブリッドの方が適していると思われるケース

 

※  矯正治療をお考えの方で、どうしても銀歯のクラウンを白い歯にしたいという方へ 、、、

 

ちなみに 当医院でも「ハイブリッドセラミッククラウン」を適用するケース はあります。頻度的に多いのは、これから矯正治療をお考えの方で奥歯に虫歯等の理由でクラウンの治療が必要になった場合です。

 

インビザラインなどのマウスピース式の矯正ではなく、昔からの一般的なスタンダード矯正( ワイヤ-矯正 )の場合、ワイヤーを通す( 留める )ために、1本1本の歯にブラケットという装置を付ける( 専用ボンドで接着する )必要があります。

 

奥歯の部位によっては、そこを虫歯治療などで「クラウン」にする場合、「オールセラミック」や「ジルコニア」にしてしまうと、これらの素材によるクラウンは表面( 材質 )特性上、ブラケットを固定・維持させることが難しくなるため、最初から矯正治療を予定される方に関しては、通常これらのクラウンは選択しません。

 

皆さんが使う市販の瞬間接着剤でも、よく見ると「木工用」「陶器用」「皮製品用」「PP樹脂用」など、用途別に分かれていたりしますよね?それと一緒のイメージなのですが、歯科では残念ながらまだ、「オールセラミック」や「ジルコニア」に対して強固にブラケットを接着・長期間維持可能な馴染みの良いボンドがあまり普及しておりません。

 

ここで突如、スターダムにのし上がってくるのが「ハイブリッドセラミッククラウン」です。素材がプラスチック主体の物ですので、「オールセラミック」や「ジルコニア」に比べると、ブラケットとの接着性( 相性 )がとても良いのです。

 

ですので矯正治療予定の方で、奥歯の虫歯治療でクラウンにする必要がある場合に、銀歯ではなく白い歯にしたいという希望の方や、虫歯ではないが矯正治療前に銀歯( クラウン )を白くしたいという方に対しては、「ハイブリッドセラミッククラウン」をおすすめしています。

 

ただし、これまでお話しさせていただいた通り、物性・耐用年数はジルコニアに比べるとそれなりのものになりますので、絶対にという事ではないのですが、矯正治療が終わり歯並びが安定したら、時期を見計らって適当なタイミングで( 数年後に )ジルコニア等にやり替えることも想定に入れてください。