· 

イーマックス(e-max)クラウンが割れた例


他の医院で治療したイーマックス(e-max)クラウンが割れてしまったということで来院されました。
イーマックスクラウンとは、オールセラミッククラウンの種類の1つです。正確に言うとオールセラミッククラウンの素材としてイボクラービヴァデント社(本社:リヒテンシュタイン公国)が製造・販売している商品名になります。広く世界で認知されている商品です。

ガラス系オールセラミック素材の クラウンは、衝撃には若干脆いという傾向があるため、 このように特に噛む力が最もかかる最後方の奥歯(第二大臼歯・最後臼歯)に適用した際、 こんなかたちになってしまうことがあります。

どんな治療(どんなタイプのクラウン)を選択するにせよ、一長一短 (それぞれにメリット&デメリット) はあるのですが、適材適所、選択を誤ってしまうと、時にこのような事態が起こり得るのですが、くれぐれも、最後臼歯にイーマックスクラウンを適用するのが間違った選択ということではありませんので、誤解のないように。 


適材適所、選択というのは、例えば骨格のしっかりした男性で、柔道やラグビーなどのいわゆるコンタクトスポーツをやっている方の最後臼歯に衝撃に弱いタイプのクラウンを選択すれば、そのクラウンはすぐに壊れてしまう(割れてしまう)だろうというのは容易に予測がつきます。 

例えば小柄で線の細いきゃしゃなタイプの女性であったとしても、 歯ぎしりや喰いしばりの癖がある人や、すでに歯の磨耗が全体的に進んでいるような人の場合には、やはり最後臼歯に衝撃に弱いタイプのクラウンは向きません。

 

ちなみにこの患者さんにおいては、以前も他医院で1度同じ歯をイーマックスクラウンで治療されたらしいのですが、やはり同様に割れてしまい、今回3度目の治療ということで転院されました。このように、以前治療したオールセラミックが割れてしまい、、という履歴のある方におかれましては、再度同じ場所を同じタイプのもので治療しても、同じように割れてしまう率は高いと思います。

セラミックが 割れてしまうのは、なにも固いものを食べた時やグッと噛み締めた時だけとは限りません。パンなどの柔らかいものを食べている際にでも、 割れる時は割れてしまいます。 

朝起きて、 何だ 歯がジャリジャリするなと思ったら、枕元にセラミックのかけらが落ちていた、、なんてことだってあるのです。

念のため何度も言うように、イーマックスクラウンは決して悪いもの(治療法)ではありません。 イーマックスはクラウンやインレー、ブリッジなどの治療の際には広く用いられています。歯科のオールセラミック治療においては、現在ジルコニアと並んで主流になっているものと言ってもいいでしょう。


「イーマックスクラウン」あるいは「セラミックとジルコニアどっちがいい?」などというキーワードでネット検索 している人というのは、おそらく「セラミックの白い歯を安く」と希望されている方が多いと思います。

ご自身でネットを駆使されていろいろお調べになり、料金も安くて白いセラミックの歯はこれがいいかな・・ と考えていても、治療部位(歯の場所)や歯のコンディション等によっては、自身で思い描いた治療法が却下(歯科医により不適当と診断)される場合はよくあります。

PCや スマホ・タブレット端末のモニター越しに、自身のイメージだけであれこれ思案されているよりも、むしろ、まずは行動、、どこか歯科医院へ 出向いて相談される方が、正確な情報を早期に得られるのではないでしょうか。あまりマニアックな検索をし過ぎて、頭デッカちにならないように・・・。

ちなみに、冒頭(の画像 )で紹介した患者さんは、壊れてしまったイーマックスクラウンを 撤去した後、新規に同部位を強度・耐久性に秀でた「オールジルコニアクラウン」で治療しました。


破損の 程度にも よりますが、 今回のような 破損の度合いでは、割れた 部分だけ 補修する ということは 不可能なため、新規に オールジルコニア クラウン で 治療する ことに なりました。この患者さんご自身も初めから「オールジルコニアクラウンで治療を希望」ということで 来院されましたので。

丈夫なオールジルコニアクラウンなら、咬合力を受け止める負担の大きな最後臼歯に適用しても「割れてしまうのでは? 」という心配は要らないでしょう。